神奈川県高座郡寒川町宮山1933
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秋からはじまるポットマムの出荷

鈴木寒川園芸の温室のなかは、今まさに出荷の日を迎えた色とりどりのポットマム(鉢植え用の菊)で溢れかえっている。菊は仏花としての印象も強いが、初心者にも育てやすく、毎年花を楽しめる多年草であることから寄せ植えやガーデニングとしての需要が高い。
「ポットマムをはじめ、菊(一部の夏菊など除く)は日が短くなると花芽をつけるという習性があるんです。本来は10月から11月に開花するものを、人工的に日長を調節して開花期をコントロールしているんですよ」
もともとポットマムの栽培をはじめたのはお祖父さまで、今は鈴木さんがそれを受け継いで守っている。

目をかけるからこそ、美しい花が咲く

子どものころから花に囲まれて暮らしてきた鈴木さんだが、実際に仕事として働いてみると、それまで見えてこなかったものが見えてきたと言う。
「自分でやってみてはじめて、花を育てることの難しさを知りました。さすがに種を蒔けば芽が出て花が咲く、と単純にいくとは思っていませんでしたが、もっと楽にできるかと。実際は、病気が出たり虫に注意したり、天候に左右されて困ることがあったり……」
そこで工夫しているのが、鉢と鉢の間の距離感を保つこと。近すぎると蒸れたり、離れすぎていると乾きすぎてしまったりと花たちは敏感に反応するので、風とおしのよい適切なスペースをとって育てている。
「でもやっぱりいちばん大切なのは、僕の観察眼を磨くことですね。まだまだ親父には勝てないところがたくさんあるので、一日一日成長していけたらと思っています」

花を買うという文化を育てる

そんな鈴木さんが就農したのには、理由がある。ほかの仕事に就くことも考えていたが、市場で働いていたときに、実家で育てられた花の流通を見たことがきっかけだった。
「父が育てている花を必要としてくれている人がいる、ということを実感できたんです。ならばここで終わらせたくないな、と思いました。今の若い人たちには花を買う習慣があまりないと聞きますし、実際にポットマムはご年配の方がよく買ってくださいます。これからは、若い人たちにも振り向いてもらえるような花づくりをしたいと思っています」
今後は、インターネット販売にも力を注いでいったり、まだまだ先の話だが、いずれは農業体験できるような場をつくってみたいそうだ。意欲的に話す鈴木さんの、今後の活躍を楽しみにしていてほしい

購入したお客さまへ……

ポットマムは、寄せ植えはもちろん、鉢のままでも楽しむことができます。その場合は根鉢を崩さず、ひとまわり大きい鉢に植え替えてください。花が終わったら3〜4節残して切り戻ししてあげましょう。年内にもう一度花を楽しむ場合は高めで切り戻しして、夜街灯など光が当たらない場所に置いてください。冬越しは、庭や花壇に下ろすか鉢のまま軒下などに置き、鉢植えの場合は水を控えめにしてください。

取材/文 吉川愛歩


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