神奈川県高座郡寒川町宮山2060
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クレームもきちんと聞きたい

温室に入ってまず出迎えてくれたのは、小さくてかわいらしい花をつけるアリッサムの苗。アリッサムは寒さに強く、秋から春ごろにかけて楽しむことができる。まず金子さんに教わったのは、花には季節がある、という考えてみれば基本的なこと。
「冬に咲く花は、暖房のきいた部屋に置いておくと元気がなくなりますし、反対に夏の花は日光浴できないと駄目になっていく場合が多いんです。その性質を充分にお伝えしたいし、できるだけ長く楽しんでほしいから、僕は生産直売という方法を大事にしています」
そのぶんお客さまからダイレクトにクレームを聞くこともあるが、それも糧と励みになる。
「花も、子どもやペットと同じ。どんな環境でどんなふうに育てていくかで、結果が変わってきてしまう。具合が悪くなれば子どもは病院に、ペットは動物クリニックに行きますよね。だから僕が育てた花のことは、僕に聞いてほしいんです」
お客さまを煩わせないような花を育てる、というのも、金子さんの取り組みのひとつ。
「できるだけ元気で強い子を育てるよう努力しています。なるべくお客さまの手間が増えないよう、長く楽しめるような花に育てあげたい。それにはやはり観察しかないですね。毎日毎日、耳を研ぎ澄ませて花たちを観察して、なにがほしいのか、なにが足りないのかを聞くことなんです」

まずは30cmの庭を

そんな金子さんが“緑育”として訴えているのが、「30cmの庭をつくる」こと。
「決して大きな庭でなくていいんです。ベランダでもいい。30cm四方の土に、植物を植えて育ててみてほしい。微々たるものかもしないけれど、CO2削減にもつながりますし、お子さまのいるご家庭なら、植物をとおして学んでいけることがたくさんあります」

難しいからこそ、美しい

信花園でもっとも時間と手間をかけて育てられているのは、年の瀬が近づくとよく見かけるようになるシクラメンだ。シクラメンは発芽してから出荷までに13ヶ月も要するうえ、育てるのが難しい花のひとつでもある。
しかし、それでも金子さんがシクラメンを栽培しているのは、「難しいから」だそう。
「いい結果を出すのが難しければ難しいほど、美しい花を出荷するときの喜びもひとしお。花を育てるのに、毎年同じということはないんです。年によって雨が多かったり猛暑が続いたり、自然災害があったりもする。そういう一日一日を丁寧に管理していくことの積み重ねで、やっと素晴らしい姿のシクラメンができあがるんですよね」
秋の出品はビオラやパンジーがメインになり、実際にシクラメンが出回るのは11月の中旬あたりからだが、金子さんが丹精こめて育てあげたシクラメンを、ぜひ楽しんでほしい。

シクラメンご購入のお客さまに

シクラメンは冬の花ですから、寒いところを好みます。暖房のきいたリビングよりは玄関や外で楽しんでください。水は、表面の土が乾いたら、下からジャーッとでるくらいたっぷり与えてください。

取材/文 吉川愛歩


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