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自分だけの温室

いくつかある温室のうち、一棟だけが新しいのは、ご両親のあとを継いだ小嶋さんが、3年前に建てたばかりのものだからだ。なかには、いっぷう変わった台の上で栽培されているシクラメンの鉢がずらりと並んでいる。それもそのはず、小嶋さんは「底面吸水式」という方法でシクラメンの栽培をしているのだ。
普通、水やりと言えば、上からホースで与えるのが一般的だが、この方法では鉢の下に水の通る道をつくっておき、下から水を吸いあげさせる。こうすることによって、栽培の効率化がはかれるほか、葉や球根を濡らさずに水をあげることができたり、購入したお客さまの水やりが楽になるというメリットもある。
就農する前、千葉の農家で修行してきた小嶋さんが実家に持ち帰った新しい方法だ。

仲間がいるからやってこれた

この方法に見合うよう、吸水力が強く通気性のよい土に改良したりと前向きな小嶋さんだが、1年目は失敗もあったと言う。
「はじめの年は、この新しい温室でどれだけのシクラメンを栽培すればいいのか、どのくらいなら自分ひとりで育てられるのか、まったく検討がつきませんでした。1年目は手に負えない量を育ててしまって、地獄のように働きましたね。シクラメンは手間もかかるし、病気になりやすい花のひとつでもあるので、日々注意しながら育てる限界の量というのがあるんです」
しかしめげずに今までやってこれたのは、こうした“農家仲間”がいるからだそうだ。
「このあたりの園芸農家さんは、若い二代目の方が多いんです。だから挫折して精神的につらくなっても、仲間に相談できる。ひとりで悩んでしまっていたら、ここまで強い気持ちになれなかったと思います。いろんな人のつくった花を見ていると張りあいがでて、またがんばろうって思えるんです」

シクラメンの美しい姿

小嶋さんの温室には、ほかにもめずらしいものがある。それは“プリマドンナ”というシクラメンで、葉の色が濃く、花はフリルのついたスカートのようなかたちをしている。シクラメンの品評会では農林水産大臣賞などの受賞も。種苗登録品種なので、誰もが育てられるわけではない。これも小嶋さんが修業先から譲り受けたものだ。
そこで、美しいシクラメンの選び方について聞いてみた。
「葉の枚数が多いことでしょうか。花は葉と同じぶんだけ咲くので、葉が多いと花も多いということになります。あとは葉がしっかりと整えられていて、中央に咲いた花の色が鮮明なものを選ぶといいと思います」

購入したお客さまへ……

シクラメンは基本的には涼しい場所に置いてください。日光がたりないと花の色が薄くなってくるので、昼間2〜3時間日光浴をさせるとよいでしょう。また、底面吸水で育てられたものを購入した場合は、花や葉にかからないように鉢の上から水を与えて、受け皿に水を張っても構いません。
秋は、ペンタスという赤やピンクの花をつける苗も出品します。こちらは反対に直射日光が大好きなので、日当たりのよい場所に植え替えてあげてください。

取材/文 吉川愛歩


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