神奈川県川崎市宮前区平6-8-15
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エコロジーな野菜づくり

川崎市宮前区にある小泉農園の周囲は住宅に囲まれている。もっとも戦後まもなくからこの土地で農業をはじめたのだから、住宅のほうが後である。もともと小作農家だったのが、昭和40年頃から野菜づくりをはじめ、現在ではそれを息子の富生さんと二人で守っている。
「昔は、畑にお金かけて肥料をたっぷりやっていればいいもんが育つ、と思われていた時代だったけど、肥料なんか少なくても、土がよければいい野菜が育つ。うちではこのあたりの公園の清掃をしている人と契約して、落ち葉をもらってたい肥にしたり、少し前までは馬事公苑からワラをもらったりもしていました。ゴミだって資源。土に返せるものは返す。それがまたいい野菜を生んでくれるんです」(正博さん)
小泉農園の野菜は、10年ほど前から減農薬を意識してつくられている。しかし農薬=イケナイものと捉えるのは危険だ、とも。
「農薬は使用方法をきちんと考えて使えば、安全なものなの。最近は無農薬にスポットが当たりすぎていますが、病気や虫によっては農薬が必要なシーンもある。それをちゃんと“考えている農家だ”というのをわかってほしい」(正博さん)

無添加手作りのハーブ加工品

この農園に嫁いだ富生さんの妻・ふさ代さんは、農家で自分に何ができるかを模索し、まだ“ハーブ”という言葉がまったく浸透していなかった時代に、たまたま興味を持ったハーブの栽培をはじめた。
「当時はハーブって何? という時代でしたからね。ハーブが育ったはいいけど、ハーブを使って何か作りたいなと思っても、なんにも情報がなかった。はじめに作ったハーブビネガーも、レストランで見かけてシェフに作り方を教わったのがきっかけ。そのときは近所の主婦が集まって、少しお小遣いになればいいね、くらいの気持ちでやってたんですよ」(ふさ代さん)
しかしこれが大ヒット。ハーブそのものがめずらしかった時代、育て方を聞きに来る人や苗を買っていく人で賑わい、ふさ代さんはハーブ栽培の講習会や勉強会に呼ばれ、現在でもときどき講師をしている。
加工品も少しずつラインナップが増え、タバスコとして使える唐辛子エッセンスや、息子さんがつくっているイチゴ農園のイチゴを使った飲むお酢“ベリーベリー”に、イチゴジャム、ハーブソルトやハーブティなど、すべて無添加手作りにこだわった品ばかりだ。娘の喜美枝さんも手伝い、既存のものも時代にあうよう改良を重ねている。

低農薬いちごと焼き菓子の販売も

「おじいちゃんもお父さんもやっている野菜づくりに参加する余地がなかった……」と笑った15代目となる博司さんは、イチゴの栽培をはじめた。川崎で初のイチゴづくりとあって、こちらも大好評。低農薬でじっくり育てられた“わがままいちご”は、イチゴ狩りでも楽しめるほか、ホームページでの販売や直売もしている(イチゴ狩りは3〜5月上旬まで)。
博司さんの妻・麻里さんは、もともと千疋屋でパティシエとして働いていた経歴の持ち主。フランス語でイチゴ畑の意味を持つ“Champ de fraise(シャン・ドゥ・フレーズ)”という屋号を掲げて、今年の5月からスイーツづくりをはじめた。
ふさ代さんの育てたミントを使ったチョコミントケーキや、イチゴジャム入りのパウンドケーキ、クッキーやフロランタンなど、今後も小泉農園の野菜やハーブを使ったスイーツを開発する予定だそう。
全員が全員、個性を活かして小泉農園を支え、愛している。取材スタッフが畑に伺うと、全員でお揃いのTシャツに着替えて写真撮影の準備をしていた様は、しあわせ家族そのもの。こんな伸びやかな家族に育てられたものをぜひ味わってほしい。

取材/文 吉川愛歩


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